JALT Journal Abstracts
May 1998
Vol.20, No.1


Articles

Yakudoku EFL Instruction in Two Japanese High School Classrooms: An Exploratory Study 

Greta J. Gorsuch 
  
日本の高等学校における英語教育について、オーラル・イングリッシュの是非が活発に議論される一方、「授業形態の実情はいまだ訳読中心である」と指摘する研究者は少なくない。ところが、この最も典型的で一般的な授業方法とされる訳読授業を詳細に分析した研究は少なく、さらに訳読授業を展開する教師が、英語の授業方法・学習方法についてどのような考えを持ち合わせているのかについては、これまで研究対象にされなかったようである。本研究では、まず高等学校の2クラスの授業観察と教師へのインタビューを行い、教師の授業行動を分析し、カテゴリー化を行った。そして、インタビューを通して判明した教師の「授業方法・学習方法についての考え」と「授業行動」との関係を考察した。 
   結果、教師は英文と和訳文の表面的な一致を重要視し、従って言語的要素への関心が高いことが判明した。また同時に、生徒は英文そのものよりも和訳文に多くの注意を向けていることが判明した。本研究は仮説の検証を目的としたものではなく、訳読授業についての探索を行った研究であるが、今後期待される訳読授業研究への橋渡しとしての役割を果たすものと考える。 

Japanese EFL Learners Perception of Politeness in Low Imposition Requests 

Hiroko Matsuura 
  
 本研究は、英語依頼表現の丁寧度について、日本人とアメリカ人の認識の相違を分析したものである。丁寧度に認識に相違があるとすれば、授業で取り上げることにより、日本人英語学習者の社会言語能力の向上に寄与することが期待される。日本人大学生77名、アメリカ人大学生48名を被験者とし、ペンを借りる際の英語依頼表現として11の異なる英文を与え、その丁寧度・適当度を7段階に評価させた結果、以下の事が判明した。日本人は “May I borrow a pen?” が自然な丁寧表現と感じる一方、アメリカ人は親しい間柄での使用には非常に丁寧な表現と感じる。日本人は “Could you/I ...?” 表現が丁寧さを欠いた表現と感じる一方、アメリカ人は適度な丁寧表現であると感じる。日本人はアメリカ人に対して比較的くだけた表現を使用できると考えるが、アメリカ人は日本人がより丁寧な表現を使うことを期待している。 
  

EFL's Othering of Japan: Orientalism in English Language Teaching 

Bernard Susser 
  
  
  本研究は、日本で英語授業を担当する外国人教員への指導アドバイスたるESL/EFL文献と文化的学習スタイルの研究報告を調査したものである。その結果、Edward W. Saidが「オリエンタリズム」と呼んだ論述の実例が多く発見された。本論文では、この「オリエンタリズム」によって、日本人学習者と日本の教育現場が著しくゆがめられた形でESL/EFL文献に報告される危険性を論じる。 
  
Research Forum
  
The Need to Teach Communication Strategies in the Foreign Language Classroom 

George Russell & Lester Loschky 
  
  本論文では、外国語授業において語彙のコミュニケーション・ストラテジーを教える有効性・必要性を論じる。まずコミュニケーション・ストラテジーと教授法について、対立するこれまでの見解を比較・検討した後、「第2言語に基づく語彙のコミュニケーション・ストラテジー」を教授すべきとの議論を展開する。大学1回生である日本人英語学習者を被験者にし、未習得の英単語に直面する2つの状況を与え、それぞれの状況において被験者がどのようなコミュニケーションの方法を用いたかを分析した。結果、被験者の多くが、第2言語語彙に基づくストラテジーではなく、第1言語を利用したストラテジーや非言語的ストラテジーの利用を考えていることが判明した。この結果を基に、第2言語に基づく語彙のコミュニケーション・ストラテジーを教授することが、円滑なコミュニケーション能力の習得に有効であることを議論する。  

Conversational Turn-taking Behaviors of Japanese and Americans in Small Groups 

Michael T. Hazel & Joe Ayres 
  
  本研究は、小人数グループにおける日本人とアメリカ人の会話の順交替 (turn-taking) を分析した研究である。文化的相違を根拠にし、「アメリカ人は日本人と比較しより頻繁に自己決定に基づいた順交替を行い、日本人はより頻繁に他者決定に基づいた順交替を行う」との仮説を立て、検証を行った。被験者は各4名からなる次の8グループである。日本人のみからなる2グループ、アメリカ人のみからなる2グループ、日本人とアメリカ人各2名からなる4グループ。結果、日本人またはアメリカ人のみからなるグループの比較で仮説は検証されたが、混合グループにおいては、自己決定:他者決定の比率は日本人とアメリカ人との間に差が認められなかった。ただし混合グループにおいては、アメリカ人がより多くの発話行為を行った。 

Perspectives
  
Classroom Self-Assessment: A Pilot Study (学習者による能力の自己評価 - パイロット・スタディー) 

Dale Griffee 

  学習者に自らの英語能力や学習状況を評価させ、学習により積極的な責任を負わせたいと願う教師にとっては、学習者の自己評価の妥当性・信頼性は重要な問題である。本研究では、学習者の自己評価を、他の学習者が行なった評価、教師が行なった評価と比較した。まず。被験者である19名の学習者に英語で口頭発表させ、自らの発表を、声の大きさ、アイ・コンタクト等の8項目で評価させた。同時に、同じ8項目について、他の学習者にも評価させ、それらの評価得点の平均値を求めた。さらに教師も同様に評価を行なった。 
  これらの3種類の評価を比較分析した結果、1)学習者による評価が教師の行なった評価に近似していること、2)英語能力の高い学習者は、英語能力の低い学習者に比べて、より教師に近い評価を行なったこと、3)学習者による自己評価に男女差は認められなかったこと、が判明した。 
  学習者が自ら行なった評価は、教師の行なった評価と大きく異なることはなかった。 
  
Intensifying Practice and Noticing through Videoing Conversations for Self-Evaluation 

Tim Murphey & Tom Kenny 
  
  
 本論文は教師がビデオカメラとビデオデッキを使って学生の短い会話をビデオに撮り、学生はそのビデオテープを持ち帰り分析するというこれまでに無い使い方を論じる。集まったデータを分析すると、学生はこのやり方を次の三つの分野で高く評価していることが分かる。1. 学生間でのナゴシエイションの練習の繰り返しをする。2. 自分、また同級生のビデオを見て、習得事項(言語事項、コミュニケーションの仕方、信条、姿勢等)に「注目する」機会が増す。3. 会話をどういうふうにするか。筆者は、この方法は教師が学生にとって取得の面で豊かな状況を作るのを助け、学生が自分のレベルで改善する必要のある事項に焦点を当て、メタ認知認識と自立を高めると結論する。これはまた学習というものを時を限り、また越えて研究しようとする教師、研究者に豊かなデータとなるものである。