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高等学校の英語の教科書について:教育の情報化への対応 (English textbooks for senior high school: Modification for educational informatisation).

Page No.: 
11
Writer(s): 
入江公啓 (Kimihiro Irie), 常葉学園大学 (Tokoha Gakuen University)

According to the Government's Millennium Project, all classrooms will be equipped with computers, allowing all teachers to utilise them in all classes by the end of the academic year 2005-2006. As the new Course of Study is implemented at senior high school from April, 2003, new textbooks are being introduced. The present paper has examined all the new English textbooks and analysed their measures for educational informatisation. The results show that 61% had entries concerning computers but that only a small number of them involved the use of computers. The author argues for more computer-related activities in textbooks as they set out the framework of the annual programme and play a central role in implementing the new curriculum.

はじめに

政府は、教育の情報化を進め、2005年度末までには全ての公立小中高校の授業においてコンピュータやインターネットを活用できるような状況を実現する予定である(文部省学習情報課 2000)。教育の情報化は、情報化社会に必要な情報活用能力を養うという側面と、情報機器を利用して教科の目標を達成するという二つの側面がある。前者は、情報活用能力は「情報」の教科だけでは達成できず、各教科においても情報教育を取り扱うことが必要という考えから行うもので、「生きる力」の重要な要素としての情報活用能力を高める活動が該当する。後者は、各教科の習熟度を深化、加速させるために情報機器を使うということであり、各教科の学習の手段として情報機器が効果的と認められる活動が該当する。教員はこの二つの活動を実施することが求められている(文部科学省 2002, 文部省 2000)。

今回、高等学校の学習指導要領が改訂され、新しい教科書が利用されることになった。本稿では、この教科書にスポットを当て、政府が進めようとしている教育の情報化に教科書がどのように対応しているのか考察するものである。

調査方法

高等学校においては、新学習指導要領は2003年度に入学した生徒から適用され、2年生や3年生は旧指導要領に基づいて学習する。本稿ではこの1年生用の教科書であるオーラル・コミュニケーションI (OCI )と英語I の教科書について調査を行った。冊数にすると、OCI が19冊、英語I が35冊、合計54冊である。これらの教科書からコンピュータ関連の記述を拾い上げ、分類した。

調査結果

教科書54冊中コンピュータ関連の記述があるのはOCI が9冊(47%)、英語I が24冊(69%)で、21冊(39%)の教科書にはそうした記述は全くなかった。詳細は表1のとおり。

表1.コンピュータ関連事項が記述されている教科書の割合

コンピュータ関連記述事項

OC I

英語 I




|

電子メールが提示されている

32%

29%

電子メールが本文の話題として取り上げられている

21%

6%

電子メールを書くタスクがある

21%

17%

電子メールの役割等について考えるタスクがある

0%

6%

顔文字、略語、電子メールアドレスが取り上げられている

11%

9%

その他

5%

6%

電子メール総合*

42%

43%




|


ホームページが提示されている

0%

34%

インターネットが本文の話題として取り上げられている

26%

17%

インターネット検索のタスクがある

0%

20%

ホームページ作成のタスクがある

0%

17%

インターネットについて考えるタスクがある

5%

6%

その他

5%

6%

インターネット総合

26%

51%



コンピュータ用語が紹介されている

11%

6%

コンピュータが本文の話題として取り上げられている

16%

0%

コンピュータ用語を使うタスクがある

16%

6%

コンピュータについて考えるタスクがある

16%

3%

その他

5%

3%

その他総合

26%

14%

コンピュータ総合

47%

69%

* 電子メールに関する記述が一つ以上あるもの。いくつかの項目が記述されている教科書もあるので、単純に項目の値を合計した値と「総合」の値とは異なる。以下同じ。

電子メール

コンピュータ関連の記述で最も多いのは電子メールに関係するものである。電子メールの英文が提示されているものには、From、To、Subject、ccなども取り入れてコンピュータ画面そのもののように提示されているものもあれば(オI 019(文部科学省による教科書の記号・番号、以下同じ)など)、メッセージの部分だけが取り上げられて、一見電子メールの英文であることはわからないものもある(英I 005など)。電子メールのほとんどは、その発信者、受信者が日本人の生徒となっているが、インターネット上で知り合った海外の友達に対して一緒にホームページをつくることに同意するもの(オI 019)やクラスメートとテスト勉強の約束をするもの(英I 023)など、内容は様々である。

電子メールが本文で話題として取り上げられているものには、会話の話題として取り上げられるものと、筆者が電子メールに対する考えを述べるものがある。前者の例としては、オーストラリアでは莫大な数の電子メールがやり取りされていることについて2人が話し合っているもの(オI 002)、後者の例としては、電子メールの便利さと必要性を認めながらも、電話で実際に声を聞いたり、直接会って話したりすることの大切さを筆者が唱えているもの(英I 026)などがある。

電子メールを書くタスクでは、自分自身や学校、住んでいるまち、日本の文化や習慣などについて外国人に説明するもの(オI 011など)が多い。また、英I 027では各レッスンにそのレッスンに関係する電子メールを書くタスクが用意されており、本文で取り扱われているインターネットサイトへ自分のメッセージを送るとか、本文に書かれていることについて自分の意見を電子メールにして友だちに送るなどの想定で、毎回電子メールを書くようになっている。

電子メールの役割等に関して考えるタスクとしては、電子メールとエアメールの長所、短所を話し合うタスク(英I 002)、電子メール、電話、手紙、ファックス、直接会うことの長所、短所を考えるタスク(英I 026)が設定されている。

電子メールに関連して、英文の顔文字「:-) :-(  :-0)」と和文の「(^_^) (;_;) (*_*)」を比較しているもの(オI 010), <g>, <jk>, <l> が顔文字と同じような役割をしていることを紹介しているもの(英I 002)、CUL、TNX、F2F、BRBが何の略であるのか選択肢から選んで解答するタスクが設定されているもの(英I 002)などがある。また、電子メールアドレスについて取り上げて、ドメインの構成と国別コードを紹介しているもの(英I 009)もある。

インターネット

ホームページが提示されているものは英語I の教科書だけで、内容は学校の紹介(英I 016など)や世界の若者のメッセージを集めたもの(英I 014など)が多い。これらのほとんどはインターネット上に実在するものではなく、実際にアクセスできるのは少ない(英I 009など3件)。

インターネットが本文で話題として取り上げられているものには、会話の話題となっているものと、筆者がインターネットのプロジェクト等について報告するものがある。このうち、英I 004では、Lincoln High Schoolのサイトを見つけるために、キーワードを「Lincoln」→「Lincoln High School」→「Lincoln Portland」と変更していく様子が描かれており、実際に検索するときに留意しておかなければならないキーワードの選び方について学ぶこともできる。

インターネット検索のタスクは英語I の教科書だけに設定されており、国際オリンピック委員会など指定されたホームページにアクセスするもの(英I 009)、Alphonse Muchaなど指定されたテーマについて検索するもの(英I 004など)、好きなホームページを探すもの(英I 032)がある。

ホームページ作成のタスクも英語I の教科書だけに設定されており、自分の学校(英I 016)、自分のクラブ(英I 015)、自分の夢(英I 014)などについてホームページに掲載するタスクが設定されている。

インターネットについて考えるタスクには、指定されたホームページ(オI 015)や自分の見つけたホームページ(英I 004)ついて話し合うタスクや、オンラインショッピングについて話し合うタスク(英I 031)がある。

その他

コンピュータ用語を紹介しているものには、homepage、siteなど単語を中心のもの(英I 004)、surf the Web、log on toなど句を中心のもの(オI 003、英I 023)、Follow this link, and you’ll find the information.など文を紹介しているもの(オI 019)がある。

コンピュータが本文の話題として取り上げられているのはOCI の教科書だけであり、日本人と外国人がパームトップコンピュータ、ゲーム、語学学習ソフト、電子書籍などについて話し合っている(オI 018など)。

コンピュータ用語を使いながら設問に答えるタスクには、聞き取り問題、穴埋め問題、ペアワークでコンピュータ用語を使うタスク(オI 002など)、コンピュータの挿絵とキーボード、マウス、モニターなどの名称を結びつける問題(英I 009など)がある。

コンピュータについて考えるタスクには、コンピュータ全般について2人で話し合うタスク(英I 031)、コンピュータの長所、短所についてグループで話し合うタスク(オI 002)、コンピュータの活用法等について2人で話し合うタスク(オI 003など)などがある。

考察

英語I は、教科書35冊中24冊(69%)にコンピュータ関連の記述があり、電子メールを書くタスク、インターネットを検索するタスク、ホームページを作成するタスクなど、コンピュータを実際に使用するものが比較的多い。一方、OCI は、教科書19冊中9冊(47%)にコンピュータ関連の記述があるが、話題としてコンピュータを取り上げたり、コンピュータ用語を取り扱ったり、コンピュータを実際に使用する必要のないものがほとんどである。電子メールを書くタスクがOCI の教科書に取り入れられているが、聞くこと、話すこと(LS)の技能には直結しないので、レッスンの発展問題として出されたり、レッスンとは別のコラムで取り扱われたりしている。

LSの活動は、読むこと、書くこと(RW)の活動に比べると、コンピュータを利用することは少なくなりがちである。LSは、直接人と人とが対話することを基本とするコミュニケーションであり、メディアを介して行うものは全体の一部でしかないからである。

筆者の知る限りでは、外国語専用コンピュータ教室は別として、コンピュータ教室にヘッドセットが設置されているところは少ないし、教師用コンピュータのスピーカーも生徒が聞き取りにくいものもあり、一般的にコンピュータ教室で音声を利用することは少ないようである。政府は、2005年度末までに各普通教室にコンピュータ2台とプロジェクター1台を整備することにしているが1、どの程度音声機器に配慮するかは各校が判断することになっており、LSの活動のための整備が確実に担保されているとはいえない。いずれにせよ、音声部門の整備が遅れているのは、情報活用という観点では、電子メールやインターネットなどの汎用性の高いものに重点が置かれており、授業で取り扱うものとしては、LSの情報機器は優先順位が低いということを示しているのであろう。

教科教育の観点からは、音声やビデオなどマルチメディアの特長を生かすことによってLSの技能を向上させることは可能だが、上記のようなハード面での整備が行われていることが必要である。理想的には、ヘッドセット、マイク、スピーカーなどが完備され、個々の生徒がコンピュータを利用できるような外国語専用教室があることが望ましいが、コンピュータが整備された外国語教室をもつ高等学校は、2002年度末現在、全国で1割程度に過ぎない(文部科学省 2003)。また、教科書の音声データは勿論のこと、自作の教材を作るためにはデジタルビデオカメラやソフトウェアなどを別途入手することも必要である2。 結局、現時点ではコンピュータを使ってLSの活動を行える環境は整っておらず、そうした状況ではコンピュータの利用を前提としたLSの活動を教科書に記述することは現実的とはいえない。実際、今回の調査ではそのような記述は見つからなかったのである。

一方、RWの活動は、伝統的に紙というメディアを使って行われてきたものであり、メディアの介在を前提としている。以前ではこの技能のために教育機器を使うことは少なかったが、社会全体が紙というメディアからコンピュータというメディアへ一部移行している中で、コンピュータを使った指導の重要性が高まっている。電子メールやインターネットは今後益々普及し、そのために英語を使う機会も増加するであろうが、その際、紙のメディアでは必要ではなかった知識や技術が必要になる。例えば、電子メールでは、手紙と電子メールとの様式や文体の違い、よく使われる略語の意味なども知っていなければならない。また、インターネットの検索には、主要なサーチエンジンのしくみや、検索を絞り込むためのキーワードの選び方も心得ておかなければならない。更に、ホームページを作成するには、レイアウト、色使い、画像などについて検討する必要がある。これらの活動は、LSとは異なり、電子メール、ブラウザーなど一般的なコンピュータの仕様で実施可能なものである。これまでの英語の授業では取り扱われなかったものや、「情報」の授業で取り扱われるものと重複する部分もあるが、英語に精通していない「情報」の教員では十分に指導することは困難なものも多く、新しい情報活用活動として英語の時間に取り入れることが望まれる。

また、こうした活動は、教科教育としても有効な手段となりうる。電子メールの交換により学習の動機付けを行ったり、インターネットで外国の文化や最新事情について学んだり、ホームページ作成により英語で情報や考えを伝えようとする態度を育むことなどができるのである。つまり、情報活用教育と教科教育の二つの観点から、RWの活動にコンピュータを利用する意義があり、今回の調査でもそうした活動が教科書に記述されていることがわかったのである。

現時点では、LSよりもRWの活動を行うコンピュータの環境が整備されており、RWの活動を中心にコンピュータを活用することが現実的である。必修科目(選択)としてRWの技能を養成する科目は、英語I だけであり、英語I の授業に上記のような活動を加えていくことは重要である。しかしながら、英語I の教科書が時代の変化に十分に対応しているとはいいがたい。コンピュータに関連する記述が全くないものもあるし、コンピュータに関連していても実際にコンピュータを利用するものは少ないのである。一方、OCI の教科書に、英語I の教科書には全く取り上げられていない英語のRWの技能に関係するものも盛り込まれている。例えば、オI 010では電子メールと手紙の違いを提示し、オI 015では硬い表現の電子メールとくだけた表現の電子メールを比較している。また、本稿では調査の対象とはしなかった「情報」の教科書にも英語のRWの技能に関係するものがある。例えば、文章作成支援ツール、英和辞典ツールの利用例を紹介したり、人間と翻訳ソフトの翻訳の早さ、正確さを比較させ、翻訳ソフトの誤訳の理由を考えさせるタスクが設定されたりしている。こうした他科目、他教科の教科書に記述されているものには、英語I の時間でも取り扱うべきものが含まれているようである。どのような事項をどの教科、科目で取り扱うべきかを整理し、教科書のコンピュータに関する記述を充実させ、授業でコンピュータを利用する活動を積極的に取り入られるように努める必要があるのではなかろうか。

結び

教科書は教科の全体像を示すものであり、教員が授業の中で指導の拠り所とし、生徒が予習復習の中心とする大切な教材である。教育環境が大きく変化している現在、変革の道筋を具体的にわかりやすく説明してくれる意味でも、教科書の役割は大きい(Hutchinson & Torres 1994)。語学学習の環境は、それぞれのクラスによって異なるので、教科書を教科書どおりに教えるという画一的な形態が最良とはいえないが(Allwright 1981)、教科書をベースとしながら、多様な学習環境に対応し、柔軟な姿勢で指導を行うことが望ましい(Hutchinson & Torres 1994, O’Neill 1982)。CD-ROM、インターネット上のサイトなど、今後新しい形態の教材も出現するであろうが、教科書のコア教材としての役割は変わらず(渡邉 1997)、教科書とコンピュータの連携を図っていくことは極めて重要である。

今回の調査は、教科書のみを対象としており、補助教材や指導用マニュアルなどについての考察は行っていない。出版社は、教科書以外に様々な資料を印刷物、CD-ROMといった形や、ホームページ、電子メールといった手段で発信しており、今後こうしたものについて研究を行うことも必要であると考えている。

1. 2002年度末現在、普通教室のコンピュータ整備率は21.7%(文部科学省 2003)。

2. デジタルビデオカメラは、2002年度末現在、1校あたり1.7台しか整備されていないので、自分1人の都合に合わせて使えるというわけではなく、他の先生と共用しなければならない(文部科学省 2003)。

引用文献

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